放送礼拝 伊藤先生

聖   書:マタイによる福音書5章43~44節(p. 8)          
 
新学期が始まってから10日たちましたが、新しい環境はどうですか?中1、高1の生徒の皆さんは、新しい校舎、新しい先生。新しいクラスメートに出会い、色々なことを試行錯誤しながら落ち着かない生活を送っているのではありませんか?期待や不安でいっぱいのことと思います。私も中学1年生の時、クラスの中で誰も知っている人がいなかったので友達ができるかなとドキドキしたことを覚えています。
さて今日はマーティン=ルーサー=キング牧師のお話をします。1968年4月4日にキング牧師がなくなって50年がたつというニュースを聞いたからです。キング牧師は黒人奴隷制度が廃止されて約70年後に生まれました。アメリカの黒人であるキング牧師は23歳で牧師になり13年間、非暴力で黒人の権利を勝ち取る運動を指導し、ノーベル平和賞を受賞し、39歳で暗殺され亡くなりました。“I HAVE A DREAM”のスピーチは世界中で有名になりました。「私には夢がある。それは、いつの日か、かつての奴隷の息子と、奴隷所有者の息子が、兄弟として同じテーブルにつくことだ。」といった内容です。
そのキング牧師が銃で撃たれて亡くなってから50年たった今、人々はもう一度この運動の意味を問い直そうとしています。キング牧師はこの活動を単なる社会運動ではなくイエス様の言葉に従って運動をしたので、黒人も白人もお互いに人間の尊厳を学ぶものとなりました。
キング牧師はイエス様の言葉を自分の生き方を変える道しるべにしていきました。私たちには悪い癖や欠点があります。自分と異なる考え方、身体の形、皮膚の色,生活習慣で他人と自分を比較し時には差別したりさげすんで優越感を持ったり、また逆に劣等感を持ったりします。
現在アメリカでは、白人至上主義と呼ばれるグループが再び勢力を増してきていて、反対派のグループの人たちとの衝突のなか亡くなった人が出た時に、トランプ大統領が喧嘩両成敗という立場に立ったために人種差別の傾向が強まってしまいました。また、ヒスパニック(ラテンアメリカ)の人たちに対する国外退去を表明していて、少し前のオバマ前大統領の融和的平和的なムードが一変してきています。
こういった人間の持つ考え方は2000年前のイエス様の時代も同じでした。権力を持つ人、奴隷として仕える人、女性・子ども・人種の差別、職業的な差別、病気の人への差別や偏見、神様がご覧になったら、何と思われるでしょうか。なんて人間は悲しい考え方をするのでしょうか。また、個人的な利益からまたは国のレベルでの損得から憎しみや戦争が生まれ、現在でもどこかで戦争の火種がくすぶっています。
さて、黒人達は奴隷制が廃止された後、白人とあらゆる所で隔離されました。具体的に言うとバスや学校や図書館、トイレ、レストラン、住む場所等で白人と区別され忌み嫌われていたのです。そしてキング牧師たちが行った公民権運動は、白人からの激しい抵抗を受けました。逮捕されたり、暴行され殺されたり、指導者たちの家が爆破されたりしました。その中でも、権利を要求してバスのボイコットをしたり、行進したり、座り込み運動をしたりしました。子ども達も小学生から高校生までが行進をしましたが、警察は警察犬と高圧ホースによる放水で攻撃したりしました。テレビで全世界に報道され、私も見た記憶があります。
そのようにして、10数年間も闘って自由で平等な生活や選挙の権利を勝ち取っていくわけです。どれほどの苦しみ、犠牲があり、血が流れたかということを思う時、最近の風潮を無視することはできません。歴史は繰り返されるなどといとも簡単に言うことはできません。
憎悪と敵対心がむき出しになり、暴力的な形で爆発した時代のさなかで、キング牧師はこう言っています。「私は、非暴力がこの国の正義を求める闘いで、もっとも有効な武器であると信じています。」
また、「人間の気高さを信じるならば、私たちは他人を抑圧したり搾取したり殺したりできないのです。」キング牧師にとっては、イエス様が教えられた愛が人間が抱える問題に対する究極の答えだったのです。

イエス様が差別や偏見の問題にどう対処なさったのかは、新約聖書の福音書を読んでいくと良く分かります。いつ読んでも目から鱗のように新しい発見があります。
今日の世界で、黒人や少数民族に対する嫌がらせ犯罪、また、私たちの身近においても、差別やいじめはますます増加する傾向にあります。こんな時、キング牧師が願ったような兄弟愛にあふれた社会を実現することの大切さを思います。私たちは、そのような学校に、また、社会を造っていくために、学んでいきたいと思います。