放送礼拝 演劇部

マタイによる福音書 6章31~34節

私が演劇部に入部したのは中三の初めの頃でした。その時私は部活に所属しておらず、周りの友達が部活動に全力で取り組む姿や、楽しんでいる姿をみて、羨む気持ちと共に焦りを感じていました。自分はこのままでいいのだろうかと心の中で思っていましたが、やる気が起きず、行動に移せないまま中学三年に進級してしまいました。そんな時に私が興味を持ったのが演劇でした。新入生歓迎会での和気あいあいとした雰囲気や自分でも演じてみたいという好奇心から入部を決めました。

入部してから発声練習、アドリブ劇、台本読みなどの練習を経て、自分なりの表現の仕方を少しずつ理解できるようになりました。昔から人前に立つのが苦手で、自分の意見も言えないままだった幼い私の心の殻をやっと破った感じがしました。初めて演者として舞台に立てた「生徒総会」という劇も、校内公演で発表した「アンソニアの胸元」という劇も、自分とキャラクターが違いすぎる役で、なりきるのが難しかったですが、私の知らない環境で生きている役に夢中になりながら劇に入り込むことができました。

高一となり、学園祭の時期がやってきました。そこで私は一つの壁にぶつかりました。昨年の学園祭では「無個性症候群」という劇をしました。この劇は遠野家六兄弟の次男「はるや」が、親や兄弟が個性的な中で自分が「無個性」だと感じ自己嫌悪に陥りますが、最後には兄弟全員でちゃぶ台を囲んで団欒をしながら、個性を意識して生きるのではなくありのままに生きることの大切さを観客に問いかけるアットホームな劇です。女子校ゆえ男子の役も女子がやるのは当たり前だと思っていましたが、いざ男子の役になると戸惑いました。台本を読み込み、稽古で先輩の厳しい指導を受けながら毎日悩みました。男子の小学一年生というキャラクターに入り込めずにいたとき、ふと聖書を開きました。するとしおりをはさみ入念にペンで囲んである箇所を見つけました。それが今日の箇所です。

中学の時にこの聖句に出会い、毎日いろいろなことで悩み、余計なことで考えすぎる日やまだ起きていないことを恐れて頭を抱える日もある中でこれを読むと、命があるだけでありがたいと感じることができ、少し肩の力が抜けて安心できました。今日の自分と明日の自分は違う、だから将来に悩みを持ちすぎる必要はないのだと学びました。そしてこの箇所はとても口ずさみやすく心地よいので、悩んだ時にすぐ脳裏に浮かんできます。だから、目の前にあることに精一杯力を注ぎベストを尽くすこと、思い悩みすぎないこと、この二つが「無個性症候群」の「たつや」を演じる時にこの聖句から気付かされたことでした。本番では自分なりに「たつや」に魂を吹き込むことができました。真剣に向き合い続ければ、道は開かれると確信しました。

今年も学園祭が近づいています。今年は「logic error」という劇を上演します。この劇は昨年の「無個性症候群」を脚本して下さった先輩が、私たちの為に書いてくださいました。今年は新入部員も増え、とても賑やかになりました。新しい仲間と共に、キャストと裏方の二人三脚で劇を作っていきたいです。そして高三の先輩にとって最後の学園祭となるので、部長を支え、部員一人ひとりを大切にしながら、また今日の聖句を意識しながらより良い劇を作り、上演を成功させたいと思います。