放送礼拝 長田先生

2018年10月15日 放送礼拝

 ヨハネの手紙1  1章1~2節
 初めからあったもの、わたしたちが聞いたもの、目で見たもの、よく見て、手で触れたものを伝えます。すなわち、命の言葉について。― この命は現れました。御父と共にあったが、わたしたちに現れたこの永遠の命を、わたしたちが見て、あなたがたに証しし、伝えるのです。

私は本を読むのが好きですが、みなさんはいかがですか?今どんな本を手にしていますか?
本との出会いは自分の世界を広げてくれます。おもしろいと思った本があったらそのシリーズを読んでみたくなるのではないでしょうか。ハリー・ポッターシリーズなどは続きが出るのを待ち遠しく思っていた人もいたはずです。また、その作者の他の本を次々と読んでいくこともあるでしょうし、関連したテーマの本を読んでいくこともあるでしょう。そうしてかけがえのない出会いをし、追体験をすることができるのです。
 私は、今年ある著者の本と出会い、その人が書いた他の本も読みたいと思い、さらにその本で紹介された写真集も手にしました。読むうちに、「私が追体験したことをみんなに伝えたい。」と思うようにもなりました。人は心動かされたことを誰かに伝えたくなります。これから、私が今年強く心動かされた命の言葉を証しし、伝えようと思います。

 私が最初に手に取ったのは『狂う人』という島尾敏雄とミホ夫婦の評伝です。著者は梯久美子さん。島尾ミホさんから何年にもわたって交流を続け、死後に息子さんから両親(島尾敏雄とミホ夫婦)のことをきれいごとでなく書いて欲しいと言われたそうです。この本で梯さんは相手に寄りそい、決して無理強いせず、相手の語る言葉を真摯に受けとめていました。
私はこの姿勢に惹かれ、続いて梯さんの『昭和20年夏』シリーズを読んだのです。
『昭和20年夏 女たちの戦争』『昭和20年夏 子ども達が見た戦争』『昭和20年夏 僕は兵士だった』という三部作です。『ゲゲゲの鬼太郎』の作者・水木しげるさんや昨年亡くなった俳人の金子兜太さん、『魔女の宅急便』の作者・角野栄子さん、国連で活躍されていた緒方貞子さん、女優の中村メイコさんなどから昭和20年の夏を中心に戦争経験を聞き書きしたものです。難しい言葉で書かれていませんし、感情的に語られてもいません。けれども、時を経て語られる言葉がこちらの胸に迫ってくるのです。図書室に入れてもらいましたので、ぜひ読んでください。
名もない一兵士が、子どもが、少女が、それぞれの思いを抱いて昭和20年を過ごしているのですが、悲惨な話しばかりではなく、思わず笑ってしまうようなエピソードもあります。さまざまな境遇の人達が生きた昭和20年、戦争が日常生活だった日々が身近に感じられるはずです。
 その中で、私が手にとってみたいと思った一冊が「女達の戦争」の中で語られていた写真集「ひろしま」です。この本も図書室に入れてもらいました。写真を撮影したのは石内都さんという女性カメラマン。広島で被爆死した人達がその日身につけていたものを撮影したものです。
 かわいい花がらのスカートが表紙でした。戦争中女性はもんぺで地味な服を着ていたと思っていましたが、この日着ていた服の中には、チェックのワンピースもあり、戦時中であってもせいいっぱいおしゃれしていたことがわかります。
けれども、思い思いに色鮮やかな服を着て出かけて行った8月6日の朝、その生涯は一発の原子爆弾によって断ち切られたのです。
 国語で平和教材を扱ったとき、思わず目を背けたくなるような資料に出会うことがありますし、実際目をそらしてしまう生徒の人もいます。見てはいけないもの、見たくないもの、と思ってしまうのでしょう。けれども、この写真集を手にしたとき、これは語り伝えなければいけないものだと思いました。そして、先ほどの聖書の箇所「わたしたちに現れたこの永遠の命を、わたしたちが見て、あなたがたに証しし、伝えるのです。」を思い出しました。
 この服を着ていた人達は亡くなりました。けれども、この写真は永遠の命をもって伝えられるべきものなのです。そして、これを手にした私は、より多くの人達に伝えていかなければいけないと感じたのです。ぜひ、図書室に入れていただいたこの本達を手にとってください。
今日、放送礼拝という時を与えていただき、この命の言葉を伝えることができて感謝です。

図書室にはあなたを待っているたくさんの本が有り、たくさんの出会いがあります。この秋、たくさんの本を手にとってください。命の言葉に触れ、そのメッセージを受けとめてください。 読書が豊かな時を与えてくれることでしょう。