2020年05月11日
学生生活 教育・研究
山梨英和学院 理事長 小野興子
はじめまして!私はこの4月、山梨英和学院の理事長に就任いたしました小野興子と申します。
この非常事態の中、新入生・在学生・院生の皆様と親しくお目に掛かる機会を与えられず残念でなりません。しかし、私自身はこの横根キャンパスは慣れ親しんだ大切なキャンパスです。非常勤講師として大学生の皆様と語り合い、チャペルでの祈りを共に捧げたことを今思い起こします。同時に学院理事会への参加のために、今も訪れている大切な場所でもあります。
私は山梨英和中学校・高等学校で学びました。英和中学校に入学し、初めて聖書と出会い、初めてこの詩編23編を暗唱いたしました。今朝の御言葉は、既にご存じの方も多いと思います。やさしく、美しいダビデの詩は、私のみならず仕事に連なる多くの方々の心の支えとなるみ言葉であると感じております。
私は英和高校卒業後、看護学を専攻しました。英和高校での恩師の勧めによるものでした。「いのちを守るためには高い学識が必要」と説いてくださったのです。卒業後は、母校付の聖路加国際病院での臨床体験を経て山梨に戻り、看護の教員となりました。病む方、老いてご自分の生活が困難になった方の生活を整え支援していくことを学生と共に考える日々が続きました。治療して健康を取り戻していく方は良いのですが、どのような治療によっても回復できない方々の苦悩が私の心を捉えました。それ以来私の専門分野は「終末期医療・ケア」となりました。命の限界を知りつつ生きる方々(がん末期、難病等)は人間が生きることへの様々な「問い」を投げかけてきます。しかし健康な私たちの慰めの言葉はそのような方々の慰めや癒しにはならないのです。
今、目には見えない最小のウイルスが、世界中の人々を脅威に陥れ、命の危機をも感じます。今だからこそ、命の限界を知りつつ生きる方々の毎日が少しだけ理解できるように思います。今、私達自身もどう生きたらよいのかを問いかけられているように思います。
本日、与えられました聖書のみ言葉 詩編23編はパレスチナの荒野を行く旅の厳しさと神の豊かな恵みと慰めを詩っています。荒野の厳しさの中を行く旅は決して楽なものではなかったはずです。そのような旅の中でも、神は豊かな安らぎと喜びを与えてくださるのです。いのちの限界に指しかかった方々も、そのことをケアする私達に気付かせてもくださるのです。
詩編23編について木田献一先生(※)は、「旅行く人間の信頼の詩」と題して「生きることの至福は主の家に帰り着き、いつまでもそこに留まること」、「これは生と死を超えた信仰者の喜び」と記しておられます。(木田献一『詩編をよむ』上P101)
医学や看護学においては身体的痛みを緩和することは比較的容易にできるようになっていますが、生死に伴う苦痛はそれを超えた神聖な人間としての備え(信仰)が必要であると気付くのです。
私は今も、できる限り病める方々の傍らに寄り添って立つ日々を続けたいと願っていますが、それは信仰者としての自らを問い続けると同時に生命の危機に直面している方々からも多くを学びたいと願うからでもあります。また、英和大学の学生の皆さんからは若さをいただきながら、歩みたいとも願うものです。
※木田献一先生は山梨英和大学の元学長・院長であられました。