2022年12月04日
教育・研究2022年10月29日、グローバル・スタディーズ領域の杉村篤志専任講師が第26回日本マーク・トウェイン協会全国大会でシンポジウム「マーク・トウェイン文学の草稿研究をめぐって」の講師をつとめ、討議と研究報告を行いました。
研究報告「『ホワイトウォッシュ』される父——マーク・トウェインとオリヴィア・ラングドンの自伝的虚像とFollowing the Equator草稿上の対話をめぐって」では、トウェインの世界旅行記Following the Equator (1897) 草稿(未刊行分を含む)が精査されました。焦点があてられたのは、校閲者であった妻オリヴィア・ラングドンによる、トウェインの父ジョン・マーシャル・クレメンズの黒人奴隷少年に対する鞭打ち描写の削除ならびに故郷ミズーリ州ハンニバルの住民の反人種暴力感情の強調の提案、それらに対するトウェインの応答内容です。
Following the Equator テクスト生成プロセスにおいて、残余的南部白人としてのトウェインのアイデンティティ不安と人種・ジェンダー問題が複雑に交錯する状況を吟味し、そのうえで、同時期にトウェインが友人や編集者に宛てた書簡に見いだされるホモソーシャリティとその排除の力学が、Van Wyck Brooksら後続の男性批評家たちによって継承・拡大視されていった経緯が確認されました。
米国カリフォルニア大学バークレー校Mark Twain Project資料編纂者Benjamin Griffins氏の協力を得て行われた今回の研究報告は、20世紀トウェイン研究史における校閲者オリヴィア・ラングドンに対する集合的軽視・蔑視の諸相を批判的に再考するもので、ラングドンがトウェインの作品に及ぼしたテクスチュアルな影響を再検討する学術的機運を促進することが期待されます。