「あなたはわたしのもの。わたしはあなたの名を呼ぶ。」2020年5月保育聖句
「あなたはわたしのもの。わたしはあなたの名を呼ぶ。」イザヤ書43章1節より
今月の保育主題の聖句にある「名を呼ぶ」という言葉に触れて真っ先に思い浮かんだ歌があります。「ひとりひとりの名を呼んで」(詞:舟山紀、曲:鷲見五郎)です。
1 ひとりひとりの名を呼んで 愛してくださるイエスさま
どんなに小さなわたしでも 覚えてくださるイエスさま
2 ひとりひとりを愛されて うれしいときには喜びを
悲しいときにはなぐさめを 与えてくださるイエスさま
子ども達はこの歌をいつもとても元気に歌ってくれます。その歌声を聴くたびに思うことがあります。それは一人一人の名を呼んで始まる入園式で見せる幼い人達の緊張と戸惑いがにじんだ不安そうな表情であり、その数年後に一人一人の名を呼んで進められる卒園式で子ども達が見せる自信と落ち着きに満ちた晴れやかな表情です。幼い人達が家族を始め、こども園や地域社会でどんな経験を積み重ねてきたか。成長という出来事が持つ尊さ、不思議さにうたれます。
「名前というのは、単なる気まぐれなラベルではない。知らない人に名を告げるというのは、もっとも親密な人間関係を築くことである。名前には、誰かをその名で呼びとめる事のできる力が秘められている」と言った人がいます。名前を告げ、名前が呼ばれる。名前を知らせ、名前を呼ぶ。それはただ人間だけができる尊い行為です。先の歌にあるように「一人一人の名を呼ぶ」ことは、その「一人一人を愛し」大切にすることにほかなりません。そのことを心に留めて、お互いの人格を重んじる「親密な人間関係を」この園で、そして保護者の皆様と築いていきたいと願います。
今月の保育主題であるイザヤ書43章が語られた背景には、聖書を伝えた人達が直面していた大変深刻な危機的状況がありました。紀元前6世紀、ユダヤの人達は自分達の国を失い、心の拠り所である神殿を破壊され、多くの人が遠い異教の地に強制連行されて50年近い年月を過ごすバビロン捕囚を経験させられました。将来を展望できない失意と絶望の中で知らされたのが、無名の預言者を通して告げられた「あなたはわたしのもの。わたしはあなたの名を呼ぶ」という神様の言葉でした。あなたは神様のもの。ただ神様だけがあなたをご支配なさる。そしてその神様によってあなたは見守られている。そのことを知らされた人達は、一人一人を受け止め、支え、導いてくださるお方がおられることを支えに、不安の中に明日を切り開く勇気と知恵を得たのでした。私達一人ひとりの名を呼ぶ神様を信じるところに私達の力の源があります。
園長 大木正人