『人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。』(マタイによる福音書7章7~12節)2024年8月保育聖句
『人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。』
求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。 そうすれば、開かれる。だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれ る。あなたがたのだれが、パンを欲しがる自分の子供に、石を与えるだろうか。魚を欲しがるの に、蛇を与えるだろうか。このように、あなたがたは悪い者でありながらも、自分の子供には良 い物を与えることを知っている。まして、あなたがたの天の父は、求める者に良い物をくださる にちがいない。だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。 (マタイによる福音書7章7~12節) |
今年も、キャンプの季節がやってきました。7月5~6日ダグラスこども園キャンプ。12~13日カートメルこども園キャンプ。そして、19~20日がプレストンこども園のキャンプです。毎年、かえで組(年長)の子どもたちが楽しみにしているこども園の中では最大行事と言えるかもしれません。宿泊を伴う行事としては、小中学校では、林間学校、修学旅行がありますが、5歳の子ども達が親元を離れ宿泊学習を実施するのは、保護者にとっても大きな不安があることと思います。でも、毎年キャンプを終えるとかえで組の子どもたちは、飛躍的に成長します。子どもたちも、親元を離れることに大きな不安はあると思うのですが、友だちと苦楽を共にする体験は、非常に大きなものだと思います。きっとキャンプが終わった後、保護者の皆様に目を輝かせて楽しかったキャンプでの出来事を語っていることと思います。また、キャンプの実施にあたっては、子どもたちにお風呂を提供して下さったり、野菜や果物を差入れて下さったり、その他多くの保護者のみな様のご理解とご協力がありましたことに心より感謝いたします。今週末に実施されるプレストンこども園のキャンプが最後のキャンプとなりますが、子どもたちがたくさんの楽しい思い出を持ち帰ることができることと思います。保護者の皆様もキャンプが終わり、たくましくなった子どもたちの話しを楽しみにしていてください。私も、3週連続キャンプに子どもたちと参加し、とても良い時を共有することができ、とてもうれしい気持ちで一杯です。
8月の聖句「人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。」は、教育の中でもよく使われる道徳的な価値の一つです。聖書の中でイエスが語ったこの言葉は、キリスト教では「黄金律(the golden rule)」と呼ばれ、時代が変わろうと変わらない普遍的な価値と位置付けられています。これに対してよく使われる言葉が「自分がされて嫌なことを人にしてはいけない。」です。私も成長の過程で多くの人から繰返し教えられてきました。「自分が人からされたくないことを人にはしてはいけない」とは、「他人に迷惑をかけない。」「他人との衝突を避け、人との関係性を重視する。」という面が強くなります。しかしこれは場合によっては正しいこと、言いたいことがあっても人間関係が崩れるのを恐れ、言えない状況を生み、人と人との分断につながり兼ねません。したがって、「自分が人からされて嫌なことは人にはしない」というのと「人にしてもらいたいことを人にする」ことは、全く別のことだと思います。
さて、「人にしてもらいたいことを人にする」というのは、簡単なようでなかなか難しいことだと思います。難しい理由はいくつかありますが、最も難しいのは自分がしてほしいと思うことと、他の人がしてほしいと思うことが必ずしも一致しないということです。あるこども園で、上履きから外履きに履き替えてみんな園庭に出る時、一人の男の子だけが取り残され、いつまでたっても履き替えることが出来ないでいました。そこで、私が「〇〇くん手伝おうか?」というとその子は、「自分でやる」と言いました。その子にとっては、時間がかかろうが、みんなと遊ぶ時間が少なくなろうが、自分で靴を履き替えることがとても大事なことだったのです。電車やバスで席を譲ろうとすると断られることもあります。良かれと思ってしたことでも、相手にとっては迷惑だったり、余計なお世話だったりすることもあります。聖書の中でイエスが言った「自分がしてもらいたいことは何でも、あなた方も人にしなさい。」というのは、相手の立場を正しく理解し、相手の立場に立って相手に寄り添うことです。決して相手の意思を考えず一方的に人に自分の価値を押し付けることではないのだということを私たちは考えなければなりません。
園 長 石川 健