『ひとりよりもふたりが良い。』(コヘレトの言葉 4章9~10節)2024年10月保育聖句
『ひとりよりもふたりが良い。』
ひとりよりもふたりが良い。共に労苦すれば、その報いは良い。 倒れれば、ひとりがその友を助け起こす。 倒れても起こしてくれる友のない人は不幸だ。 (コヘレトの言葉 4章9~10節) |
「暑さ寒さも彼岸まで」。例年、夏の暑さは8月後半から徐々に緩やかになり、9月の彼岸過ぎから過ごしやすくなってきますが、今年は9月になっても毎日猛暑が続いています。春と秋の彼岸の時期が、1年で最も過ごしやすい時候とされていますが、いつになったら過ごしやすくなるのでしょうか。こども園では連日の猛暑のため外遊びができず、室内で過ごすことが多くなっています。また、全国的にも猛暑のため子どもたちがプールに入る機会が増え、それによって手足口病などの感染が例年になく増えているそうです。
さて、甲府の「カートメルこども園」と韮崎の「ダグラスこども園」では、新園舎が完成し、いよいよ10月1日から新園舎での生活がスタートします。多くの皆様のご尽力や祈りによって新園舎の建築は実現しました。聖書の中に「新しいぶどう酒は、新しい革袋に入れねばならない。」(ルカ福音書5章38)という言葉があります。これは、当時のユダヤ人たちが古い教えやおきてにこだわって、新しいもの、良いものを受け入れようとしないことに対してイエスが用いたたとえ話です。私たちも今まで続けてきたことを新しく変えていく時には、非常に躊躇します。特に教育の現場では、この考え方が根強いように思います。しかし、これでは毎年同じ時期に同じ行事を前年と同じように行うだけで、新しい発想は出てきづらいです。家庭でもこども園でも、決まりきった一定の範囲の中だけで教育を行い、子どもたちが自ら選択する機会を与えなければ、子どもたちが何かに興味を持ち、何かにチャレンジしようとする気持ちは育ちにくく、いつも安全で無難な方向へ進もうとします。子ども一人一人の個性や自ら成長しようとする姿勢を育てる事が、何よりも大切です。そのために、もっと自由に大胆に子どもたちの活動の場を広げて行く必要があります。そして私たちも、新しい時代に合った考え方を身につけることができなければ、教育的発展はそこでストップしてしまいます。例えば、30~40年前の教育の主流は、徹底的な知識詰込み学習で、とにかくテストで良い点を取ることだけが求められました。そこで問題となってきたのは、それについて行けず取り残されてしまう子どもたちが増えてきたことです。また、不登校の児童、生徒が増える中で、最近になってやっと文部科学省も数値として評価できないことから放置してきた「非認知能力」(主体性、想像力など)に目を向け始めました。こども園でも、8月、9月に各園で先生たちを対象に研究会を実施し、新しい教育観と今後の教育保育についてみんなで学ぶ機会を持ちました。
今月の聖句「ひとりよりふたりが良い。」は旧約聖書コヘレトの言葉です。聖書の中でもコへレトの言葉は、非常にユニークです。コヘレトの言葉には「むなしい」という言葉が何回も出てきます。また、1章3節では、「太陽の下、人は苦労するが全ての苦労も何になろうか」とも述べています。全くやる気をなくさせられるような言葉ですが、時には鋭い言葉として心に突き刺さります。「ひとりよりふたりが良い」というのは、その通りだと思います。さらに二人よりも三人…。ただし、私たちが暮らす社会はなかなか厄介です。昨日まで仲間だと思っていた人に簡単に裏切られたり、自分の知らないところで攻撃を受けていることもあります。SNSによる誹謗中傷等はさらに深刻で、時には人の命を奪う場合もあります。また、たくさんの人に囲まれて生活をしていても、自分は1人なんだという孤独感を抱くこともしばしばあります。ある意味、とても生きづらい世の中になってきているような気がします。だからこそ、人と人とのつながり、信頼関係は重要です。とくにこども園のように、多くの子どもたちを預かる教育機関では、先生たちの関係性、協働性は大切です。1人1人違いがあっても、それを乗り越えて、お互いを尊重し合い、力を合わせて子どもたちの教育に当たらなければなりません。私たちは新園舎建築を契機として、気持ちを新たに、より良い教育保育を目指し、もっともっと学ぶ機会を増やして行きたいと考えています。引き続き保護者のみな様のご支援、ご協力をお願いいたします。
園 長 石 川 健