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カテゴリ:全体のお知らせ|園長通信 投稿日:2019/05/20

天の下にあるすべてのものはわたしのものだ。(2019年5月保育主題)

天の下にあるすべてのものはわたしのものだ。(ヨブ記41章3節より)

 

私達がときおり聞くことの一つに、今日の環境破壊にはキリスト教が深く関わっているという批判があります。旧約聖書の創世記第1章にある「産めよ、増えよ、地に満ちて地を従わせよ。海の魚、空の鳥、地の上を這う生き物をすべて支配せよ」という、神様の人間に対する命令が、人間を傲慢にさせ、それが結果として世界の自然環境破壊の原因になったという批判です。正確さを欠く指摘ですが、心にとめるべきことがまったくないわけではありません。人間の欲望や身勝手が自然を損ない、環境を破壊しているというのは確かだからです。私達の底知れない欲望やわがままが貴重な資源を貪り、大切な自然を損なってきたことは否めません。地球の温暖化も砂漠化も酸性雨も、豊かな自然環境をしっかり保持して、未来の世代に、子ども達に手渡す務めを十分に果たしてこなかった私達の責任があります。

その反省に立って、未来に向けて、私達が果たすべきこと、なすべきことを考える時に参考になるのが、「環境破壊の遠因」とみなされている先の創世記の言葉です。実は、その言葉、背景には、聖書を伝えた人々が、紀元前6世紀に経験した、敗戦による祖国の崩壊、敵国への捕囚という一大破局があると言われます。徹底的な破局によって、すべてを失い、ただ絶望するしかなかった人達を励まし、力づけるために語られた言葉、それが先の言葉なのです。破局を体験し、自らの惨めさ、はかなさを痛感し、自分達は塵灰に過ぎない、無に等しいと絶望する人々に向けて語られたのが、「産めよ、増えよ、地に満ちよ」という神様の言葉なのです。だからこれは決して人々の欲望や身勝手を認める言葉ではありません。どん底の苦しみにあえぐ人達に、神様の恵みを告げ知らせ、神様のお力を信じて立ち上がらせるために告げられた慰めの言葉、希望の言葉です。この言葉は人々に、神様の前で、神様と共に生きる人間としての喜びと責任を自覚させます。心おごる者には神様の正しさの下で自らを振り返り、悔い改め、謙遜に生きることへと導きます。

その思いが、今月の保育主題である「ヨブ記」の言葉にも込められています。ここで「わたし」と言っているのは神様です。神様ご自身が「天にあるすべてのものはわたしのものだ」と仰っているのです。「天にあるすべてのもの」には、「天」がしっかり包み、優しく抱き、確かに見守るこの地にあるもの「すべて」が含まれます。大なるものも小なるものも、高きにあるものも低きにあるものも、貴なるものも賎とみなされるものも、遠いものも近くのものも、動物も植物も、老いも若きも、命ある者もそうでないものも、「すべてはわたしのものだ」と神様は宣言されます。「すべて」ですから例外はありません。神様のご支配から漏れるものは何一   つないのです。すべてのものが神様によって支えられ、心配りされている、配慮されているのです。

私達は「すべてのもの」が神様の恵みの下にあり、そのご支配によって保たれ、生かされていることを信じます。だから謙遜に、勇気と知恵をもって、神様がお造りになったこの世界を、尊いものとして受け止めて、感謝をもって未来に手渡していきます。それは私達の大切な使命です。

園長 大木正人

 

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